陸上、海上、航空のどの輸送モードであっても、船舶、航空機、トラックを動かすエンジンが必要です。これらのエンジンを動かすために、私たちは通常、化石燃料を使用しています。エンジンに使用される燃料はすべて、地中奥深くから採掘された石油をベースにしています。燃料には炭素などの化学物質が含まれていますが、これらの化学物質は通常では地表に出ることはなく、大気中に放出されることはありません。
輸送によるCO2e排出量の大部分は、化石燃料を燃やすことで生じます。物流業界では、エンジンからの排出量の削減を達成するため、理想的には二酸化炭素をまったく排出しないことを目的に、多大な取り組みを行っています。
サステナブル燃料とは?
海上貨物および陸上貨物輸送で使用されているバイオ燃料、航空業界で使用されているSAF(持続可能な航空燃料)と呼ばれるサステナブル燃料は、従来の燃料と化学特性および物理特性がほぼ同じであるため、二酸化炭素排出量を大幅に削減する最も有効な手段となります。燃料を製造するために使用される材料が、これまで大気から吸収した以上のCO2eを排出しないこと、またはすでに「廃棄物」とみなされ、これ以降使用されないことが証明できれば、「サステナブル燃料」と呼ばれます。さらに、サステナブル燃料の原料として種子や野菜を使用する場合は、人間の食料製造に適さない農地で栽培されたものであることとされています。
サステナブル燃料の原料とは?
一般的に、サステナブル燃料には、バイオマス(生物資源)を原料とするものと、合成燃料やeフューエルと呼ばれるものの2種類があります。現在、商業的に利用できるのは、生物学的に生産されたサステナブル燃料のみです。二酸化炭素排出量は、使用される原料によっては最大90%削減することができます。
燃料に使用されるバイオマスの量には限りがあるため、バイオ燃料の流通量には自ずと限界があります。つまり航空分野において、バイオベースのSAFは世界全体の燃料需要の10%以上をカバーすることはできません。したがって将来的には、大気中の二酸化炭素を取り出して水素などの物質と結合させた合成燃料やeフューエルが必要となってきます。合成SAFは、利用量の限度なしに生産でき、バイオマスの供給制約を回避して、排出ガスを最大100%削減できるため、航空業界にとって長期的な解決策になると考えられています。合成燃料は、まだ工業的に生産されておらず、実験室レベルの量しか利用できません。合成SAFを普及させるため、キューネ・アンド・ナーゲルはドイツにある世界初の合成燃料生産拠点への支援に取り組んでいます。
海上貨物輸送においては、アンモニア、水素、メタノールなどの低炭素燃料の開発が進んでおり、最初の船舶が発注されているところです。しかし、全世界の航路をカバーできるような完全にCO2ニュートラルな大型コンテナ船の実現は、まだ5~10年先になるでしょう。
サステナブル燃料は完全にカーボンニュートラルなのでしょうか?
バイオ燃料は、その原料にもよりますが、CO2e排出量を最大90%削減することができます。廃棄物を原料とする植物の場合、植物は成長段階でCO2を吸収します。そして、植物が吸収したCO2は、バイオ燃料を作って燃やすときに排出されるCO2と相殺されます。
けれども、バイオ燃料には原料の栽培や収穫、輸送に加え、燃料の生産が伴うため、完全にカーボンニュートラルというわけではありません。バイオ燃料代わりにeフューエルや合成燃料を使うことで、排出量を最大100%削減することができます。
航空機、船舶、トラックには、サステナブル燃料をどれくらい搭載できるのでしょうか?
航空機
理論的には、100%SAFで航空機を飛行させることは可能です。試験飛行が何度も行われており、SAFのみを用いた最新モデルのエンジンの試験も行われています。しかし、現在の航空局の規制ではSAFの混合率は最大50%までとされています。実際には、SAFの利用量の制限と関連コストの問題から、そういった高い割合は実現しておらず、通常SAFは航空機に搭載される燃料の1%未満です。ただし、荷主が希望する排出量の100%削減が達成できないというわけではありません。キューネ・アンド・ナーゲルでは、サステナブル燃料の利用を増やし、サステナビリティを最適化し、輸送時の排出量を回避するための一般的な手法である、ブックアンドクレーム(Book & Claim、B&C)調達モデルに基づいて運営しています。ブックアンドクレーム方式では、SAFは特定の空港まで物理的に輸送されて特定の航空機に給油されるわけではなく、 SAFの生産施設近辺の空港の燃料システムに組み込まれます。この方式では、割合制限などの技術的な制約を受けることなく、SAFを購入することができるのです。SAFの使用量は、CO2排出量の削減量とリンクして計算されます。
船舶
海上貨物輸送において、バイオ燃料で動く船舶もありますが、 まだ業界標準にはなっていません。キューネ・アンド・ナーゲルでは航空貨物輸送と同じ原理で、従来燃料を使用する船舶で輸送される貨物に、完全に追跡可能なバイオ燃料を割り当てるマスバランスコンセプトを提供しています。
トラック
トラック輸送において、私たちは水素化植物油(HVO)が今後3年間で需要が増加するであろう戦略的なブリッジング技術であると捉えています。この燃料は長距離輸送に重点を置いたもので、CO2排出量を最大90%削減でき、一部の欧州路線ではすでに当社のトラックや運送会社の車両で使用されています。
加えて、トラックには100%HVOを使用でき、改造したり車両性能を低下させることなく、直接使用することが可能です。さらに、HVOは現行の燃料備蓄を一掃することなく、化石燃料の代替となる「ドロップイン燃料」として使用できるという高い柔軟性も備えています。例えば、平均3,700 kmの距離を往復する場合、最初の1回の給油のみで事足りるのです。
キューネ・アンド・ナーゲルのサステナブル燃料サービス
「私たちは、グローバルにビジネス展開している世界最大級のロジスティクスプロバイダーとして、当社のゼロカーボンなビジネスモデルへの移行を推進し、さらにお客様の移行もサポートします。」
– キューネ・アンド・ナーゲル サステナビリティ部門グローバル責任者、Andrea Debbane
これは、お客様に次のような固有のサービスを提供できる密接な関係を意味します。
- お客様のサプライチェーンにおける輸送と物流の排出量を測定
- 代替輸送モード、ルート、キャリアのオプションを提供して、排出量を回避
- 代替の低炭素燃料の調達により排出量を削減
私たちは、すべての輸送モードにおいて革新的でカスタマイズしやすい輸送オプションを提供しています。
サステナブル燃料を使用する主なメリットとは?
- サステナブル燃料はゼロカーボン経済への道へと導き、イノベーションを促進し、御社の排出量削減目標を達成します。
- 当社のサステナブルソリューションは、世界中のお客様の全輸送モードおよび全ルートでご利用いただけます。
- ロジスティクスプロバイダーの一元化された窓口を通して直接、代替燃料を利用し、お客様の製品をパワーアップしましょう。
当社の全輸送モード対象のサステナブル燃料ソリューションをご利用いただくことで、今すぐ将来的な低炭素経済の創造に着手し、意思から行動へと移行することができます。当社のエキスパートがサポートいたします!